思い返せば11年前。
自分でドイツに行くと決めたのに、直前になってものすごくブルーになったんです。
「なんで美味しい食べ物がないあんな国に行かなきゃいけない!?せめてドイツがスペインかイタリアだったら毎日ごはんがおいしいのに…!」と。(私はスペインに行ったことはないので、本当に現地のごはんが美味しいのかは知りません。)
ドイツといえばビールやソーセージ、パンなどが有名ですよね。
でも、私はアルコール激よわな上にパン嫌いなので、あまりドイツの食に魅力を感じていませんでした。
移住する前に数回ドイツに来てはいましたが、ピンとくる食べ物がなかったのもこの拒否反応の原因でした。
美味しいもの情報の発信源(人)と好みが合わないと悲惨
夫の家族は私がドイツに来るまで日本の料理を食べたことがありませんでした。
今どき珍しいですよね。お寿司もラーメンも食べたことないなんて。田舎の人たちなので、そういうものかもしれませんが。(今は食べています)
なので日本人である私が好きそうな味をわかるはずもなく、「これ美味しいわよ」と言われて出されたものに何度ガッカリしたことか。
今ならわかります。ドイツの料理はシンプルな味付け。フルーツや野菜はやや野性味が感じられる。
習うより慣れよ。どうせ永住(予定)なんだから、美味しいと感じられるようにならないと損ですよね。
在独日本人が盛り上がる旬の食材
時は流れ、私の周囲にも日本人が好きそうなものがわかる人も増え(とはいえNot日本人)、私もSNSからの情報をチェックするように。
いつの間にか、ドイツでその時期に楽しまなくてはならない旬の食材を覚えました。
季節ごとに紹介していきますね。
おすすめの食材:春
春とはいえどもまだまだ肌寒い。けれども春の食材がMarkt(市場)に並び始めると心がウキウキしてきます。
Spargel(シュパーゲル / 白アスパラ)
4月中旬から店頭に並び始めるシュパーゲル。ドイツ国内産の出荷は6月24日までの期間限定食材です。
スーパーなどでは皮を剥いてくれる機械がありますが、美味しいお出汁をとるためにはこの皮はとても大事。一手間かかりますが、皮は家で剥きましょう。
ドイツにはシュパーゲル専用ピーラーと鍋があります(我が家にもしっかりあります)。
シュパーゲル専用鍋は、シュパーゲルを立てて入れられるので、真ん中より下の方は茹で、上の方は蒸す感じで調理します。水とバター、少量の塩と砂糖で調理した後、温かいホランデーズソースをかけて召し上がれ。茹で汁はリゾットに使えます。
Erdbeeren(いちご)
その年の天候にもよりますが、大体5月の終わり頃から7月の頭くらいまでがいちごの旬。
いちご畑でのいちご狩りもあり、近くのいちご畑のスタンドが町のいたるところに立ち並びます。
品種によってその甘さはまちまちなので、甘みがたりないなぁと思ったら練乳をかけていただきましょう。「Milchmädchen」という名前でチューブ入り、あるいは缶入りで売っています。
いちご狩りは食べ放題というわけではありませんが、「甘みを確かめるために」という名目なら少しくらいは食べていても目を瞑っていてくれます。
日本のいちご狩りのように「ビニールハウスで腰の高さの位置で摘める」ということはなく、土の上にしゃがみ込んで摘む形です。
腰の弱い人、肌の弱い人は、それなりの覚悟と準備をして行きましょうね。
Rhabarber(ルバーブ)
日本では見慣れない食材ルバーブは、5月から6月ごろにかけてドイツのスーパーやMarktで見かけます。
見た目は赤いセロリのような感じですが、味はセロリよりもかなり酸味が強い。
ルバーブを生で食べることはほとんどなく、基本的にはジャムやケーキに使われます。
日本人に人気の調理法はなんと言っても「なんちゃって練り梅」。
誰がこの調理法を思いついたのか知りませんが、これが昔から在独日本人に大人気です。ルバーブの茎と塩だけで懐かしい味が再現できます。
緑が多いルバーブもありますが、練り梅にするからには赤い部分が多いものを選びましょう。
葉っぱは使えませんのでご注意を。
Bärlauch(ベアラオホ / 行者にんにく)
ニラが手に入りにくい在独日本人にとって、ベアラオホの存在はとっても偉大。
住んでいる地域によって、野生のベアラオホが森に自生しているところもあるようで、そんな人は超ラッキー。スーパーで買うとなると1袋2ユーロほどするので、ベアラオホの季節にはベアラオホの自生地域に引っ越したくもなります。
自家製餃子に入れるのがもっぱらの使い道ですが、チヂミや醤油漬けなどにも使えるので、普段ニラに飢えている人にとってはありがたい存在です。
このベアラオホの葉は、スズランの葉と非常によく似ています。
スズランの葉は毒性があるので、自分で収穫して食べる人は、間違えて摘まないように注意してくださいね。
Kirschen(さくらんぼ)
ドイツ人はさくらんぼをデザートにするのが大好き。
カフェでワッフルを注文すると、「アイスクリーム」「ホイップクリーム」と並んで「熱いさくらんぼ」が横に添えられます。
ドイツの黒い森と呼ばれる地域が発祥の「Schwarzwälder Kirschtorte」はさくらんぼのケーキで、ドイツ全土で食べることができます。
余談ですが。Marktに子連れで買い物に行くと、お店の人が子どもに「これ食べていけー」とバナナやらみかんやらをくれます。(パン屋さんではBrötchen、肉屋さんはハムをくれるので朝ごはんいらず)
それがさくらんぼだった時。ドイツのさくらんぼはアメリカンチェリーのようなので、子どもはひと口で食べません。
何度かに分けて食べた結果、口の周りと指先を真っ赤にした子どもたち。そして、茎と種を捨てられずにしばらく持ち歩くその時間。
薄い色の服を着ていた日には、さくらんぼの汁が服に付かないかヒヤヒヤします。
おすすめの食材:夏
ドイツの夏は短くとも、クーラーがないためとても暑い!
そのせいなのかなんなのか、ドイツ人はアイスクリームをめちゃくちゃ食べます。
そして、果物もたっぷりのケーキもたくさん食べます。
ベリー類は私が苦手なので割愛していますが、ブルーベリーやラズベリーをはじめ、さまざまな種類のベリーも夏の食材。
ベリーはなぜか、ドイツの子どもたちに大人気ですね。
Pflaumen(プラム)
夏になると、プラムを使ったケーキがパン屋さんのケーキ部門(?)によく並びます。
甘酸っぱいプラムケーキは少し大人の味。
子どもは苦手なことが多いですね。家で食べるときは、たっぷりの生クリームを添えていただきましょう。
Mangold(スイスチャード)
緑と赤の色合いが綺麗な野菜、スイスチャード。
とても鮮やかなので、炒め物や蒸し物に入れると、テーブルが華やかになります。
葉の部分はそのままで食べたいところですが、よっぽど若いものでないと固くて食べられません。
そのため、葉を食べる時はさっと茹でて使うか、塩揉みをしてから使ってくださいね。
おすすめの食材:秋
日本と同じくドイツでも、秋といえばきのこ!
秋はさまざまな種類のきのこを、さまざまな調理の仕方で楽しむ季節です。
Pfifferlinge(アンズダケ)
夏の終わり頃からスーパーやMarktに並び始めるアンズダケ。ドイツの秋の味覚代表といってもよいでしょう。
黄色い鮮やかな色と、他のきのことは違ってなぜか薄い木箱で売られているその姿。
マッシュールームなどのような庶民代表のきのこと比べると、やや高級品。
それでもこの時期ならではのものなので、ぜひ食べたいですよね。
アンズダケはクリームソースの具材としても人気で、豚肉のソテーにアンズダケのクリームソースが定番です。
Kürbis(かぼちゃ)
HokkaidoやButternutsなど、ドイツにはかぼちゃの種類はたくさん。
ハロウィンの時期になると、いつも以上にたくさんの種類のかぼちゃがスーパーの店頭(というか外)に並びます。
これらのかぼちゃ、全てが食用かと思うのは大間違い。
ハロウィン用のデコかぼちゃや、ジャックオランタン制作用のかぼちゃも一緒に入っていることも。
食用なのかどうかわからない時はいきなりスーパーで買わずに、Marktで店員さんに聞いてみるのが吉。
もちろん、スーパーでまわりのおばちゃんに聞いてみるのもありですが(多分おばちゃんも知らない)。
Hokkaidoかぼちゃは北海道と名付けられただけあって、日本のかぼちゃと似ているかと期待しますよね。ところがどっこい!かなり水っぽいです。調理の多大な労力の後に、その水っぽさにガッカリしてしまわないように、あらかじめ知識として知っておきましょう。
我が家では、かぼちゃはもうButternuts一択です。だって皮が剥きやすいから…。
おすすめの食材:冬
冬、と書いていますが、私は冬がいつからなのかもうわからなくなっています。
日本人の方が書いたドイツのブログは、普通に日本の感覚で12月は冬〜、と書いてありますよね。
しかし私、在独10年目にして知ったことがあります。
ドイツのカレンダーでは12月21日頃から冬が始まるのです!12月4日にくるニコラウスはあんな格好しているくせに、秋の風物詩なの!!信じられない!!(何の話。今回は食の話です)
Federweißer(フェダーヴァイサー)
毎年、Federweißerが店頭に並び始めたという情報は、インスタで入手している私です。
食材の紹介と書いておきながら、ここだけ飲み物が出てきてすみません。でも、これは絶対紹介しなくてはいけないのです。
Federweißerは発酵しながらの状態で売られている、とても若いワインです。Federweißerは白ワイン、Federroterは赤ワインですが、ここでは統一してFederweißerと記しています。
口当たりは柔らかく、甘い。まるで微炭酸の葡萄ジュースのようです。お酒が好きではない人でも、毎年これだけは欠かさず飲む、という人も多いですよ(私もその1人)。
室温で置いておくとすぐに発酵が進むため、冷蔵庫に入れておきます。そして内部のアルコール度数は時間がたつごとに上昇していきます。
Federweißerの瓶を横に向けるのは厳禁!
Federweißerは発酵し続けているため、売られている状態でも栓は完全に閉められていません。だから、横に倒すなどという行為は厳禁。
ごく稀にスーパーのレジの店員さんでもFederweißerを知らない人がいます。一応、瓶にも「倒すな」のシールが貼ってありますが、それに気づかない人もいます。
そんな人のレジに当たってしまうと、いつものように横向きにスキャンされた途端に惨事が起こります。
レジのラインに並べる時は必ず立てる!
そして店員さんがうっかり横にしないように目を光らせておく!
うっかり車のトランクで横向きに寝かせない!
Federweißerは日本でも、京都の「天橋立ワイナリー」などの一部ワイナリーでいただけるようですよ。
Feldsalat(ノヂシャ)
日本名はノヂシャです、と言われても日本にいる間は1度も食べたことのない食材です。
主にサラダとして食べられるもので、苦味などはほとんどなく、野菜が苦手な子どもでも食べやすい!我が家の子どもたちも、Feldsalatを出すと貪るように食べています。
ドイツに来た最初の頃は、根っこのようなものが気になってわざわざ1つずつ取ってから調理していたのですが、数回目でそんな無駄なことは必要ないと気づきました。少々根っこらしきものがついていようが普通に食べられます。もやしのヒゲを食べた時のような不快感はありませんよ。
量が多くて消費しきれない、なんて時は、ほうれん草のおひたしのようにサッと茹でて和えるのもおすすめです。
Grünkohl(ケール)
冬になるとレストランやカフェでの食事メニューに登場するのがGrünkohl。
日本では青汁に使われるケールとして有名です。栄養価が非常に高く、Grünkohlを食べた日は普段栄養不足の体がなんとなく元気になった気がします。
ドイツでの一般的な食べ方は、Grünkohlとじゃがいも、玉ねぎを細かく切ってからひたすらグツグツ。食感が全くなくなるまで煮たら、温かいソーセージと一緒にいただきます。レストランやカフェで出てくるのはだいたいこのスタイルです。
日本人に好まれる食べ方はチップスにする方法ですね。この場合は、葉の真ん中の硬い部分は使いません。硬い部分は他の料理に使いましょう。
調理は簡単。洗ったGrünkohlの水気をしっかり拭いて、好きなオイルを塗ります。オーブンの低音(150℃くらい)で焼いたら、好きな塩をかけて出来上がり。とても焦げやすいので、気をつけましょう。
郷にいれば郷に従え、現地の食材を楽しもう
今回は季節別のおすすめ食材を紹介しました。
食べ物は、天気や気温と同じように、季節を感じられるもの。
日本から離れた以上、その土地ならではの旬の食材を楽しめるようにしたいですね。
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