日本語を子どもに伝えたい。
その一心で母子間の言語を日本語にしていますが、自分で決めたこととはいえ、他の人の理解が得られないと辛い。
今回は、私と我が家の子どもたちの日本語環境についてお話しします。
ドイツ語オンリーをつらぬく親世代
私は、3つ年下のドイツ人夫と、その間に生まれた7歳息子、5歳娘とドイツの西の方に住んでいます。
まさかドイツ人と国際結婚をしてドイツに住むなんて思っていなかったので、完全にドイツ語習得が遅れに遅れ。。。
移住当初は英語で話してくれた夫も、今ではほぼドイツ語で話しかけてきます。
そして、ドイツ人は英語ができるはず、との思い込みも虚しく、意外と英語が通じない。
夫の両親はドイツ語オンリーなので、最初の方は会話に苦労しました。
親族の集まりでも、医師や会社経営者といった高学歴の人たちがいるのにも関わらず、英語を話してはくれません。
とはいえ、ドイツ人と結婚したとは言えども、ドイツの永住権を得るにはB1と言われるドイツ語検定の合格が必須。
なんとかかんとか合格したものの、その後9年たった今も大した進歩は見られず。
そのわけは…。
子どもの日本語を母語にするためにしたこと
ドイツのみならず、海外で日本人親が持つ目下の悩みは、子どもたちの日本語教育です。
隣市は、ヨーロッパの中でも評判の日本人街の大きさを誇るデュッセルドルフ。
そこに行けば日本食レストランや日本食スーパー、日本人家族が溢れていて、日本語に苦労することはない環境。日本人幼稚園や日本語補習校もあるし、週末の公園は日本人だらけ。
しかし我が町は日本人が少なく、都心部へ行くのも一苦労。
子どもが日本語を話してくれるようになるには、家で私が徹底して日本語を話すしかないのです。
おかげさまで(?)、私は相手が赤ちゃんだろうが、宇宙語を話す幼児だろうが、お構いなしで日本語(しかも関西弁)を話すタイプなので、言葉のシャワーを浴びせると言う意味では問題ありませんでした。
「子どもに日本語を話すために私自身のドイツ語習得が遅れた」なんて言いたかったのですが、完全な言い訳ですね、ハイ。
日本語話者でない人がいる場でも日本語会話を徹底する難しさ
私が住んでいるところは日本人が少ない地域ではありますが、幸いだったのは移民が比較的多い地域であること。(夫にすれば移民が多いのは幸いではない、と文句が出そうですが)
そして何よりも、私の『子どもたちに対しては絶対日本語しか話さない』という意志を義理の家族が尊重してくれたことです。
私を含めた家族みんなで団欒している時、それまでドイツ語を話していた私が突然子どもたちに日本語を話す。もちろん子どもたちは私には日本語を返します。会話が1往復で終わらない場合は、しばらく私と子どもたちの日本語会話が続くことも。
もちろんどんな会話をしていたのかは、すぐに周囲にドイツ語で説明するようにしています。
一方で、知人の日独家族には「なぜ私たちがわからない日本語を今あえてこの場で話すのか」と不愉快に感じる人たちもいるそうです。
日本語話者でない人がいる場合にはドイツ語(共通語)を話す、というルールを適用する方法ももちろんありです。我が家の場合は外でも『母子間は日本語』を徹底できたのはラッキーでした。
子どもがバイリンガル環境であることを外部の人が認めてくれる心強さ
我が家も義理の両親も、互いの家が近いこともあり、かかりつけ医が同じということがよくあります。
例えば義理の父が耳鼻科に行った時、例えば義理の母が婦人科に行った時、例えば夫が子どもの定期検診に小児科に行った時。
そこの医師たちは、数ヶ月前に見た私と子どもたちのことを夫や義両親らに話しているようです。(そもそも日本人が少ないので私と子どもたちは目立つ&小さな地域なので私と義両親の関係も知っている)
クリニックでも医師との会話の合間に子どもたちに日本語で話しかけているのですが、それを見て『ドイツ人でない親がその母国語を子どもに継承していくこと』をとてもポジティブに夫と夫の両親に伝えてくれるのです。
特に耳鼻科の医師は、自身がトルコ系であることもあって何度も何度も私や夫に「Chihiroが子どもたちに日本語を話し続けるのは大切なこと。諦めないで」と言ってくれます。いつ聞いても泣きそうになりますね。
子どもたち自身がドイツ語以外の言語をどう受け取るか
保守的な地域では、幼稚園や小学校の子どもたちがほぼドイツ人両親を持つと言います。
それは、日常的にドイツ語以外の言語を耳にする機会がないということ。
そこにもし私の娘が入ったとしたら、彼女は幼稚園の友達の前で私に向かって日本語で話しかけてくれたでしょうか。
もし私の息子がドイツ語しか話さないクラスメイトに囲まれたら、私がその子たちの前で息子に語りかけたとして答えてくれるでしょうか。
移民の多い私の地域では、幼稚園のお迎え時間にイタリア語やロシア語、トルコ語やアラビア語などが飛び交っています。親が子を呼び、子が親に答える、その言葉がドイツ語ではない。
ドイツ語話者ではない人が身近にいる、ということが当たり前の子どもたちにとって、私と娘が日本語を話しても囃し立てることもなければ、不思議に思うこともないのです。
家の外で日本語環境を用意してあげられなくても、『ドイツにはドイツ語以外の言葉を話す人もたくさんいて、それは否定されるものではない』ということを教えてあげられたことは大きな財産だと思っています。
コメント