日本でもドイツでも、幼児の定期検診で発語のチェックをされますよね。
我が家は息子に続き、娘も言語療法に通うようになりました。
今回は、ドイツで言語療法施設(Logopädie/以下ロゴペディ)に通うきっかけとその流れを紹介します。
息子の場合
通常なら4歳の定期検診で小児科で語彙数や発語をチェックされます。
しかし、息子は人見知りが激しいスーパー内弁慶。
小児科の医師による発語チェックを全て無視しました。
医師が差し出したプリントを指差して「これは何?」と聞いても、目も合わさず地蔵状態。
忙しい小児科は息子にちんたら時間をかけていられません。
「後日、近くのHNO(耳鼻咽喉科クリニック)に行ってください」と紹介状を渡され、地元のHNOを訪れることになりました。
発語チェックを耳鼻咽喉科でおこなうことに驚きましたね。
予約した日にクリニックに行くと、子どもの発語チェックに慣れた風のお医者さんと楽しく話しながら(人見知りはどうしたっ?)チェックを受けていました。
お医者さんによると”sch”と”s”の発音が不明瞭とのこと。
そしてHNOから言語セラピーをするクリニックへの紹介状をもらいました。
さぁ、ロゴペディ通いがスタートです。
この時点で、息子は4歳9ヶ月でした。
娘の場合
小児科での4歳の定期検診では様子見でした。
しかし、5歳の定期検診で息子と同じく”sch”が正しく発音できていないとのことでロゴペディ通い決定。
ロゴペディは、兄である息子が毎週楽しく通っていたところ。
娘にとってはずっと行きたかった憧れの場所です。
小児科のお医者さんに「ロゴペディに通ってもらって…」と言われた瞬間に「Juhuuuu!!(やったー!!)」と叫んでいました。
娘の場合は、小児科でロゴペティへの紹介状を書いてもらったので、HNOを経由せず。
娘がロゴペティ通いを開始したのは、5歳2ヶ月の頃からです。
ロゴペディに通いたくても空きがない
小児科でもHNOでも、ロゴペディへの紹介状を書いてはもらえます。
ですが、どこのロゴペディへ通うのかは自分達で決めます。
我が家は地元に評判のよいロゴペディがあったのでそこに迷わず決めました。
幸運にも、息子の場合は2ヶ月待ち、娘の場合は1ヶ月待ちで通うことができました。
息子のセラピー開始時間は幼稚園が終わってからだったのですが、娘は平日の朝。
幼稚園をなんとしてでも休みたくない娘(親としてもお昼ご飯は幼稚園で食べてもらいたい)のために、平日午後遅めの時間に空きが出ればそこに移動させて欲しい、とお願いした上で、現在は平日の朝に通っています。
言語療法が必要なのはハーフだからじゃない
息子にロゴペディでのセラピーが必要だと判断したHNOのお医者さんは、何度もこう言ってくれました。
「このセラピーは家庭の言語環境がどうだとかで決まるものじゃない。 多言語環境にいようが、ドイツ語オンリーの環境にいようが、セラピーが必要な子はいる。 このセラピーはドイツ語の発音矯正になるけど、日本語の発音も良くなるはず。 あなたは今までと同じように、子どもたちに日本語を話してね」
言語聴覚士の先生にも「お母さんの日本語は関係ない。両親がドイツ人でも、ここに来る子はたくさんいるわ」と言われました。(実際、両親がドイツ人の息子のクラスメイトも何人か通っていました)
子どもが多言語環境にいて、その子の発音に悩む人たちにも届いて欲しい言葉です。
悲しいことに、多言語環境に子どもを置いていることに(その子の発語が遅ければ遅いほど)否定的なお医者さんや言語聴覚士の話も聞きます。「この子はドイツ語がまともに発音できないんだから、日本語教育をやめたら?」なんてね。
私は専門家ではないし、そのように言う専門家に反論することはできません。
でも、それを言われて苦しんでいる人には、ほかのお医者さんや言語聴覚士の話を聞くのもありではないかと言いたいです。
Sprechen Sie in der Sprache zu Ihrem Kind, die Sie am besten beherrschen, d.h. in Ihrer Muttersprache. / あなたが最もよく知っている言語、つまりあなたの母国語であなたの子どもに話してください。
Tipps für Eltern mehrsprachig aufwachsender Kinder(抜粋)
Beherrscht Ihr Kind zum Zeitpunkt des Kindergarteneintritts noch nicht die deutsche Sprache, sprechen Sie auch weiterhin mit ihm in Ihrer Muttersprache. Sie stärken Ihr Kind damit für den Spracherwerb./ 幼稚園に入るまでに子どもがドイツ語を話せない場合も、引き続き母国語で話してください。 そうすることで、子どもの言語習得が強化されます。
ドイツ連邦言語療法協会(dbl)では、上記のように「多言語を話す子どもを持つ親のためのヒント」を提示しています。
言語療法では何をしているの?
言語聴覚士の先生によると、息子は”sch”と”s”、娘は”sch”、”s”と”l”の発音に矯正が必要でした。
“sch”はドイツ語で非常に重要な発音です。
ロゴペディに通うドイツ人の子どもたちの多くもこれにつまずいてます。
息子の場合は、日本語の「さしすせそ」を「sa・shi・su・se・so」ではなく「tha・thi・thu・the・tho」のように舌を軽く噛んで発音しているのも気になっていました。
実際のセラピーでは、子どもと言語聴覚士の先生がひたすら言葉を話しながら一生懸命遊んで(?)います。
カードゲームやすごろくなどを使って、ことあるごとに苦手な発音をしていきます。
子どもにとっては、言語聴覚士の先生は「自分の話をひたすら聞いてくれて、会話も思いっきりしてくれて、遊んでくれる人」、という認識のよう。
ロゴペディに行く日は、言語療法に行く日というよりも、「めっちゃ相手してくれる人と楽しい時間を過ごせる日」、だと思っているようです。
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言語療法が終了するのはいつ?
息子が言語療法に通っていたのは、10ヶ月のみ。コロナ禍のごたつきがあったせいで、何かとクリニックに通うのが難しくなった頃。
「そろそろ良くなってきたからもういいんじゃないか」という夫のひと言で終了になりました。
電話でそのことを告げると、言語聴覚士の先生も「もう良いですよ」と言ってくれました。
しかし、本当に息子の言葉を誰が聞いても問題ない、と言ってくれるようにまでなったのかは疑問です。
す。息子より少し前からロゴペディに通っている子は、小学2年生になった今もまだ通っているそうです。
そして、息子本人もいまだに会話中に夫や義母に”sch”の発音を訂正されているところを見ますから…。
息子がロゴペディ(自主)卒業後、日本語を話す時に出てきた異変についてはこちら。
ロゴペディへの紹介状には10回分と書いてあるけど…
小児科やHNOからもらうロゴペディへの紹介状(兼保険適用のための処方箋)は「1週間に1回、10回分」とありますが、10回で終わるなんてことはまずありません。
ロゴペディへは、基本的には年単位で通うことになります。
ロゴペディは、通うのが負担にならないところを選ぶのが重要です。
通うのをすすめたい言語療法
子どもが言語療法に通うのは、全て保険で賄われ、自己負担0!
ほぼ全ての子どもたちがロゴペディからは毎回ご機嫌で帰ってきます。
感覚的には無料で楽しみながら学んでくれる習い事のような感じです。
もちろん、ロゴペディは発語に問題を抱える子どもだけでなく、大人も通っています(実際、娘のセラピーの次の人は大人の女性)。
クリニックの壁には、アルツハイマーを抱える人とそのパートナーへのグループセラピーの案内もありました。
もし、自分の子どもの発音に問題があると誰かから指摘されても、悩まないでください。
それを改善してくれる場所がきちんとあります。
お医者さんの紹介状があれば無料で言語セラピーが受けられるのです。
定期検診でロゴペディ通いをすすめられたら「むしろラッキー!」くらいの気持ちで受けてくださいね。
「言語療法か…。うちの子の発音に問題が…。」ではなく、「楽しく学べる!ラッキー!」ですよ!
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